メモ日記 ver.3.0

スクエニと鋼の錬金術師と荒川弘・初音ミク!
何もかもがネタバレ。

信じ続けることの落とし穴
2004/11/05 (金) 22:46:23
スクエニのこと (0) http://crosswalk.blog62.fc2.com/blog-entry-157.html 編集
今回のTBは「泣き笑い文庫」ということで、いわゆる心の一冊のお話。
最近読んだ中では断然「西の魔女が死んだ」です。
でも、今回は折角なのでマイナーなマンガ小説を取り上げてみようと思います。

発行:エニックス 原作:夜麻みゆき 著者:大江イオン 「小説 刻の大地 奇跡の夜」

です。「刻の大地」は昔ガンガンで連載していたマンガで、当時私はとても大好きでした。そんな中、発売されたこの小説。ところが、「刻の大地」という原作を離れ、物語の内容にズタボロに感動し、ヘロヘロになったところに著者あとがきでノックアウトされました。

物語は、主人公が信じていたモノを覆され、その実、裏切っていたのは自分だと気づき、失い、迷い、それでも一連の事件から小さな答えを出すといったお話です。
大江さんは、奥付を見る限り文章に関しては素人で、小説としては稚拙なものかもしれない(現に原作ファンの間でも評判はいまいち)でも、この主人公に感情移入さえできれば、絶対に心に響いてきます。答えのない旅に、希望を残して終らせるのも、また秀作です。

物語が言う、嫌いを嫌いと拒否せずに「知るコトはできるんじゃないかって思うんだ」という言葉は私の人生の格言となりました。
そして「きらいだったら食べてもらえばいいカモ」には人生の真理を垣間見ます。(笑)

そして。

「そのころ、俺は何者でもなかった。いろいろなことに手を出してはいたが、どれも上っ面だけで手応えはなく、淡い霧の中をふらふらと進んでいるような実感しかなかった。二十歳を過ぎて、何者でもない、何者かになれる予感がないというのは、結構ヘビーな状況だ。」

この様な書き出しから始まる、本書のあとがき。これは正直言ってキタ。
(蛇足ですが、「二十歳を過ぎて〜」というあたりは会社を辞めてからズッシリときました(笑))
マイナーだしもう絶版になってるかもしれないので、こっそり長文引用させてもらおうと思います。

「よけいに俺は苛立ち、ろくに前も見えないのに、見てもいないのに、駆け出して、激しく無様にすっころぶということをくり返していた。(略)根拠のない自信。それだけが俺の財産で、武器であると同時に枷でもあったのだ。」

だけど、そんな自分をその時はバーで出合っただけの担当さんは「子共」と言ったそう。

「こうあらねば、というイメージに縛られすぎだというのだ。自分がありたいと思うイメージと、ねばならぬと思うイメージは違うのだと。(略)彼女がわかりきったことを言ったときには、がっかりし、腹を立てた。そんなこと、とっくに知っている。だが、ねばならぬ、と思わずに、どうしてどこかに行けるだろう。」

だけど大江さんは気づきます。

「自分を制御する能力。落ち着き。持久力。そんなものが、俺には決定的に欠けていると思いしらされた。そして、それこそが俺をどこかに連れていってくれるはずのものだった。」

そして。

「ねばならぬと思う気持ちの危うさにも気づき始めている。(略)ねばならぬ、と思うことは途中の過程を省いて、一直線に瞬間的に、そこに至らねばダメだと思い込む。そんなことはないのだ。俺は何者かになりたい。何者かになろうという気持ちを失わないでいたい。それといっしょに、いまだ何者でもない俺を愛する。」

と言っています。

大して見えもしていないものを、絶対にそこにあると盲目的に信じ、信じることで自我を保っていた当時の私にとっては衝撃的な内容でした。まさに漠然とした「ねばならぬと思うイメージ」に縛られ、焦って、掴みそこね、余計に凹む。だからこそ、また信じ、手を伸ばし・・・無限ループをくり返していたのです。
本当は、そこには何もなかったのに。
いや「ない」ことはないのです。でも、当時私がやっていたのは地上から、星をつかもうとしていた行為。ちょっと考えても、せいぜい屋根の上から手を伸ばしていた、ただその程度。
本書はそれに気づかせてくれました。
星を掴むには、天文学を勉強し、ロケット作り、宇宙生活の訓練をし・・・そこからはじめなければいけないと。ただ手を伸ばしているだけじゃダメだなのだと。本人は必死でも、それは無謀なだけで、努力でもなんでもないんだって。

「絶対にこうなりたい」と、夢を持つことは大事だと思います。だけど、それゆえに、結局自分の視野を狭めてしまうことになっていないか。これ以後、私は常に心に置くようにしました。すると、それまでかなたにあった星が、おぼろげながらに見えてきた・・・そんな気がします。
時々、あまりに真っ直ぐな故に、自分がなにをすべきか、何ができるのか見失っている人が居ます。そんな人に私は薦めたい。

今でも、元気がなくなると、この本とあとがきを読み返します。歴史に残る名書ではないですが、私にとってはとても大事な一冊です。
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